INDEX
Ⅲ優れた工法開発とは
工法開発で良い成果を得るためには、以下の6つのポイントがあります。
01試作を繰り返し、製品を作り込んでいく
工法は、製品やワークに直接影響することから、工法開発を進める上では、製品開発部門との密な連携が重要となります。特に初めて造る製品の場合は、造ってみないとわからないことも多く、造っては確認・調整する、という仮説検証が何度も繰り返されます。
このため、工法開発は製品開発部門と一緒に造り込んでいく関係となります。
開発の現場では、工法開発側が「こんなものどうやって造るんだ!(製品開発部門はなにを考えているんだ)」と思っていたり、一方の製品開発側では「良い製品を考えたのに(作れないとは何事だ)」と思っていたり、理想と現実との戦いが存在します。
だからこそ、工法開発者は、製品図面には現れてこない、製品企画部門や製品開発部門が実現したいことや想いをしっかり汲み取り、そこに共感をしながら、試作と検証を繰り返していくことが大切になります。
02適切な試験評価・検証方法を確立する
試作を繰り返す中では、なにをもって良品とするのかを決めないと、その工法の良し悪しの判断も、改善のための仮説立案もできません。このため、工法開発においては、試験評価や検証方法を確立することが大変重要です。
どのようなデータを取るのか、そのデータをどのように取得するのかを検討する必要があり、工法開発ならではの難しさが存在します。
例えば、ひと口に耐久性評価と言っても、ゆっくり負荷をかける静的試験もあれば、想定負荷を何度も繰り返す動的試験もあります。どのような負荷をどれくらいかけ、その結果をどう測定するのかを決めなければなりません。
また、まだ世の中で確立されていない工法にチャレンジする場合は、適切な評価・測定装置がないこともあります。この場合、評価・測定装置から製作し、評価の精度やスピードを高めていくことも工法開発の重要な仕事となります。
さらに、必要なデータを効率よく取るためには、統計学を応用した、「実験計画法」などの手法を用いることも有効です。データの取得方法とともに、得られたデータの解析手法も決めておけると良いでしょう。
このように、試験評価・検証方法を確立した上で、試作と改良を繰り返していくことで、品質やリードタイムのばらつきの低減に取り組むことが、工程能力の確保につながります。
03解決手段の幅を広げる
工法開発においては、工法の引き出しをたくさん持っていることが有利になります。最新の技術はもちろん、他の業界で使われている工法が解決手段になることもあるため、工法に対するアンテナを広く張ることが重要です。
先進技術については注目度が高いですが、古くからある技術は、信頼性が高く安定して使えるという点でヒントとなることもあります。複雑な挙動が求められる場合でも、シンプルな工法の組み合わせによって解決を図ったり、コストを低減したりすることができます。
解決手段の幅を広げるために、専門的な知見や技術を持っている社内外の技術者と協業することも有効です。生産プロセスの専門部門(加工、組付け等)や、材料、設備・ツールなどの専門企業を巻き込み、製品実現に向けて知恵を出し合うことで、目標の工法の実現を図ることができます。
04量産性も考慮する
工法開発においては、設備になった姿をイメージすることも重要です。設備になったときの挙動や、製品への影響、リードタイムがどれくらいになりそうかをイメージできると、工法開発に実現性が生まれます。
どれだけ革新的な工法を考えることができても、それを量産ベースで実現できる設備が構築できなければ、机上の工法になってしまいます。
また、生産に人の手が介在する場合は、生産現場の人に実際に手を動かしてもらって、技量面で現実的かどうか、安定的な品質で造ることができるかを確認できると良いでしょう。
目標に達していなければ、人による作業を減らすことを考えたり、素早く安定した作業ができるための治具を検討したり、あるいは作業マニュアルを充実させるなどして、解決を図ることができます。
一方で、設備で生産する場合は、工具の摩耗やメンテナンス性も検討する必要があります。
これらは品質を確保することと同時に、製造原価にも大きく影響するため、現実的な工法を検討することが求められます。
05積極的な特許活用・特許出願
工法開発の際には、特許を活用することも有効です。解決しようとしている課題の多くは、過去に誰かが同じような悩みに直面し、解決している可能性があります。
特許庁などが提供しているデータベースで、解決したい課題を検索することで、ヒントを得られることもあります。先行特許を知らず知らずのうちに侵害することを防ぐ目的でも、開発過程での特許調査は重要です。
また、優れた工法が確立できた際には、積極的に特許出願、取得をしていくと良いでしょう。
特許は法的に模倣を防ぐ目的もありますが、なにより技術力のPRになります。自社が苦心の末に開発した工法が、業界にインパクトを与えたり、ひいては日本の競争力を高めることにもつながるかも知れません。
06次期製品に向けて工法を磨く
目標・目的を達成できる工法開発に成功し、無事に生産が立ち上がっても、工法開発に終わりはありません。他社に真似できない独自の工法を持つことは、自社に競争優位をもたらします。
このため、次期製品を見据えて工法に磨きをかけ、より良いものにしていく取り組みも重要です。
一方で、工法だけ独り歩きしてしまうとその開発が無駄になってしまうため、製品のロードマップに呼応する形で、工法の要素技術の開発ロードマップを作成し、計画的に開発していくことが重要です。
また、その過程においては、定期的にロードマップを見直すことも必要です。製品を実現する周辺の技術が変化し、いつの間にか必要な工法が変わっている、ということを避ける必要があるためです。