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Ⅱ集めたデータをどう使うか
「スマート工場」「工場のIoT化」が叫ばれて久しくなりました。センシングや通信技術が普及し、工場内や設備から多くの情報が得られるようになっています。多くの工場がデータの取得やモニタリングを導入していますが、データを貯めているものの活用が進んでいなかったり、改善が人任せになっているケースも少なくありません。
ここでは、集めたデータの代表的な活用例について紹介します。
01トレーサビリティシステムの構築
自動車や電子部品、食品や医薬品など、あらゆる業界で導入されているのがトレーサビリティシステムです。原材料の仕入れから加工・組み立て等の製造工程、販売や出荷後に至るまで、すべての過程を追跡(トレース)可能にする仕組みです。万が一トラブルが発生した際に、どの段階で不具合が起こったのか原因の特定をしやすくし、対策を講じることができます。製品に対するリスク管理や、ユーザーの安心・安全を確保することが目的です。
製造工程のトレーサビリティでは、製造ロットごとに、どの設備でどのような加工条件で作られたものか記録することが一般的です。近年は、製品の流し方が変わってきてデータ収集の仕方も変わっています。たとえば、従来は搬送に使用するパレットにRF-IDを付けてデータ取得していましたが、現在は個別搬送・個別管理が多くなっています。また、業界によっては複列ラインや混流ラインなど、ライン構成も複雑になっているため、どのラインで作られたものか記録することも求められています。
02生産の遅れ進みの見える化
設備の生産実績や部品の出荷管理情報を活用し、生産の進捗状況をリアルタイムでモニタリングするシステムです。滞留や部品の欠品が、どの工程で起きそうかを事前に察知し、対応することによって、生産ラインを止めずに安定した生産を実現します。
製造現場の担当者がひと目見て対応策を実行できるよう、わかりやすいインターフェイスをつくることが重要です。
03傾向管理で不良品を削減する
加工条件を始めとする設備稼働データと、製品品質に関するデータを蓄積し、その関連性や傾向を管理・分析するシステムです。不具合が発生しやすい加工条件や環境条件などを把握し、対策を打つことで、不良品の削減や品質の安定につなげていきます。
事例
生産平準化システムの構築
複数の製品を組み立てる混流生産ラインにおいて、ライン投入順序をコントロールすることで、生産変動コストを抑制する、生産平準化システムの構築例を紹介する。
混流生産ラインにおいて、各製品の生産量が毎日変動する場合、特定の製品をつくり続けるとその所要時間や前後工程との兼ね合いで、待ちが発生したりパレットが足りなくなるという問題がある。
こうした問題を、情報連携によって解決することができる。具体的には、日当たりの生産計画情報を取得し、各製品のライン投入間隔が一定となるように作業順序を変更して解決を図った。また、この際に作業者が使用する部品の順序がわかるように、供給部品棚に工夫をし、次に使用する部品をライトで知らせる仕組みを取り入れた。
生産計画を受け取るPCのAPIを自社開発し、PLCとの連携通信によって、生産変動によるコスト抑制と、部品の供給間違いを防止するシステムを構築することができた。
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