INDEX
Ⅰ情報システム設計とは
情報システムとは、工場における人、モノ、設備に関する情報を管理するもので、大別して、生産活動で運用している各種管理システム(IT:Information Technology)と、加工設備などを制御・運用する制御系システム(OT:Operational Technology)で構成されます。
生産技術部門では、この各種管理システム(情報系ネットワーク)と制御系システム(制御系ネットワーク)の連携を検討します。これによって、生産管理システムからの生産指示を受けたり、加工情報や設備情報をモニタリングをしたり、トレーサビリティを実現させることができます。
情報システム設計では、このようなシステムの構想や仕様を検討し、情報系と制御系のネットワークを繋いでいきます。
情報システム設計を取り巻く環境と課題
近年は、工場内のICT化やDX化によって、QCDのレベルをさらに高める取り組みが進められています。たとえば、生産ラインの遅れや進みを把握してバッファを調整することや、加工精度を検知して前工程の設備の加工に調整を入れたり、部品交換をアラートするなど、設備から得られるデータをうまく活用しています。このため、データをどのように活用するかを念頭に、情報システムを設計することが重要になります。
また、データ連携にあたっては、ハード面の課題を解決することも情報システム設計の腕の見せ所となります。イーサネットにつなぐことができない古い設備を利用していたり、データの出力形式が合わない等、様々な課題を克服していくことが求められます。
事例
古い設備をシリアル通信で繋いで検査工程を自動化
立ち上げから長年稼働しているラインでは、イーサネット接続に対応していない設備やPLCが使われていることがある。その場合、情報系ネットワーク(データベース)と接続できないため、加工実績や検査結果を紙で記録して残しているケースも散見される。今回事例で取り上げる品質検査工程も、PLCがイーサネットに繋げないため、人が外観検査をして、紙に製造番号とともに合否判定を記していた。
近年は、新旧設備でも安価にIoT化できるゲートウェイが商品化され、接続やデータ収集は手軽に行えるようになった。一方で、データのフォーマット変更(トランスフォーミング)や、データの活用方法などについてもしっかり考える必要が出てきた。
本事例においても、どのようなデータをどういう仕組みでデータベースに連携するか、定義・構想することから始めた。検討の結果、外観検査をカメラで行うことや、合否判定にとどまらない品質に関連するデータ(消費電流や圧力値など)を、製造番号ごとに記録をしていくシステムを構想。また、通信方法として、PLCからシリアル通信でデータを取得し、プロトコル変換をしてデータベースに保存する方式を採用し、解決を図った。
市販されているゲートウェイを用いると、設備の数だけゲートウェイを用意する必要があるが、今回の事例ではデータ量が多くないことから、4つの設備・PLCの情報をひとつのゲートウェイで収集する設計とし、低コストでの品質工程の省力化を実現した。
設備や機器がネットワークに繋がる時代となり、ライン立上げ当時にはできなかったことができるようになっている。ただし、安易に導入すると良い成果が得られなかったり、不必要なコストがかかる。
この事例から、常に最新の技術を収集し活かすことに加えて、既存のシステムに寄り添ってカスタマイズをしていくことが重要である。